no.10「さまざまな...J.S.BACH 無伴奏チェロ組曲」060303

●バッハの無伴奏チェロ組曲は、極東の島に暮らしていてさえ、第一番冒頭の前奏曲を聴けば、誰でもが「あぁ、これ知ってる」という曲だ。CMでよく流れていて、最近では再春館製薬が使っているのに気付いた。この「チェロ独奏のための六つの組曲」(J.S.BACH)の楽譜は、ある港町の古い楽譜屋で、13歳のPablo Casals=パブロ・カザルス(スペイン・1876-1973)が、偶然に発見したそうだ。山と積まれた束の中に紛れ、黄ばんで触れると今にもぼろぼろになりそうだったという。

●以前から私は、この全曲(no.1-6)のCDが欲しいと思っていた。しかし、第一希望のロストロポービッチ演奏のCDは絶版なのか、簡単には手に入りそうにもなかった。一方、最近になって、クラッシック音楽にあまり関心を示さなかった我が同僚が、「この曲が好き」と言い出した。i Tuneで「僕が聞きたいのはどれなのか」と試聴している。演奏者によって印象が違うと感じたようだ。同僚の好みはミッシャ・マイスキーかと、手始めに1・3・5番の収録された1999年版を手に入れた。つられた私も簡単に宗旨替え、マイスキーって格好いいな!という単純な動機だった。

f0062810_9574576.jpg左...
Mischa Maisky
1999年録音
CELLO SUITES nos.1,3,5.
右...
THE BEST OF
Yo-Yo Ma
アルバム中
1・12曲目に
一部収録

●早速、手元にあったヨーヨー・マのベストアルバムの第一番プレリュードとも聴き比べをしてみた。どちらも素晴らしいのだが、同僚は「これと違う!」と訴える。マイスキーはもう一枚、このアルバムより10年前?に同じ曲を録音したものがあるらしい。どうやら同僚が試聴したのは古い録音、それが良かったらしいが、それは相当本気で探さないと容易には手に入らないかもしれない。同じ演奏者でも10年もあれば解釈や世界が変わって当然ではあるが、もっとゆっくり情緒的なプレリュードを期待していたようだ。マイスキーの1999年版の第一番プレリュードはテンポが速くクール、ある意味で現代的な印象である。1,3,5番の全体を聴く限り、私には、第一番プレリュードが速いのは新しい感覚として納得できた。

●ちょうどその頃、出会い頭、偶然にもロストロポービッチの全曲DVDと遭遇した。え?DVD?とは思ったが、演奏する姿が見られるのも良いと感じて手に入れた。各曲の間に語りが入っていて、それが楽しい、運が良かった。いかにも実直で揺るぎない演奏を目と耳で大いに楽しんでいた。

f0062810_9573069.jpg左...
Mstislav Rostropovich
1991年録音
Bach Cello Suites

右...
PABLO CASALS
J.S.BACH
CELLO SUITES

●このロストロポービッチのDVDでは、カザルスとの出会いや交流のエピソードが語られた部分があった。カザルスが、ホテルの自室にロストロポービッチを招き、この曲を演奏してくれた時の話だ。ロストロポービッチをベッドに座らせ、楽器を抱えたカザルスは、最初のフレーズを弾き、次のフレーズ、また次のフレーズ、フレーズごとにロストロポービッチの表情と対話しながら演奏をしたと言う。何て素晴らしい光景だろうと想像した。
●そして、迷わずカザルスの演奏したアルバムを探すことにした。しかし、カザルスのCDとなると今あるのか、あっても音は大丈夫だろうか。ところが、意外にも簡単に目の前に現れたカザルス盤。6曲の録音は、70年近く前の1937-1939年に行われているが、スピリッツがこぼれんばかりのものである。説明を聞きながら、古色に染まった演奏を最初に聴いた時、同僚君の表情に、さすがに得体の知れない笑みが浮かんだ。でも、ロストロポービッチが語るエピソードを知り、昔、晩年のカザルスが国連ホールで「鳥の歌」を演奏した、その時にテレビ放映された光景が脳裏に焼き付いている私には、故郷に帰ったような懐かしさがこみ上げてきた。

f0062810_9581327.jpg●最後にあげるのは、この曲のCDを探し続けていた時に、終始気になって仕方がなかった右の日本人チェロ奏者・鈴木秀美さんのアルバムだ。この人、雰囲気あるなぁ...。同僚には「もういい加減に」と諫められたが、私の中に棲むメフィストフェレスの「今聴かないとお前は明日生きていないかも知れない」という囁きに負けた。負けて良かった。
●上の4人のように、世界中に名前が通っているのかどうか、東洋の...日本人の演奏家。私はこの演奏家の名前を知らなかった。またもやビジュアルからではあったが、素敵な風貌だし、録音(2004年10-11月)場所も秩父ミューズパークと興味が増すばかりだった。そして、驚いた。好き嫌いは個人のものだから、どうこうは言えないが、低音の響きが私にはとても好みに合っている。落ち着いたふくよかな音楽や世界の作り方も素晴らしい。どうしようもなく惹きつけられた...そのインスピレーションを信じたのが幸運だった。ついでながら、同僚もこのアルバムが気に入ったらしい、愉快だ。
●今、一日に一度は、いずれかの「チェロ独奏のための六つの組曲」を聴く日々である。

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by arinco22 | 2006-03-03 19:52 |      聴


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